• 些細な、且つ、個人的に重大な事件。
  • まったく無駄な思索。
  • 実行しないための方法論。
  • 緩やかな詭弁。
  • その他。

▼幾つかの劇的なもの

useless books

『珍説愚説辞典』 J.C.カリエール、G.ベシュテル著 高遠弘美訳 国書刊行会

 間違ったことしか書いていない辞典である。つまり、時代を問わず世界中の者たちが著したものの中で、「わけのわからない言葉、間違い、誤綴、莫迦げた考え、大胆すぎる仮説」だけを厳選して集めた辞典である。  Amazonのカスタマーレビューの中に「こんな辞典、よくもまあ編纂した人も編纂した人だが、翻訳した人も翻訳した人だし、刊行した出版社も出版社だ」と書かれているが、まさにその通りである。  無駄なことしか書かれていない辞典。これを読むことによって、読者はどこでもない場所に置き去りにされ、「読んだ」という充実感のみに支配される。

 ――投げ縄を武器として用いる試みがなされてきた。(略)現在までのところ、こうした試みは殆ど無意味な結果に終わっている。投げ縄は銃はおろか、現今、我々の騎兵連隊に再編入が検討されている剣やつまらぬ槍にも遠く及ばないのである。   P・マルトゥファニ 『若き日の日記』 1889年2月

 ――それでも、同じ罪を犯した複数の犯罪者を拷問にかける場合の問題がある。バルドの指摘によれば、法は、最も醜く歪んだ顔の者から始めるべしと定めているという。   C・D・ド・ラ・ベリエール 『理論的相貌学』 1664年

『万国奇人博覧館』 G.ブクテル、J.C.カリエール著 守能信次訳 筑摩書房

 世界各国のあらゆる奇人たちの奇行エピソードのみを集めた辞典。こんなふざけた本、誰が書いたんだと思ったら、『珍説愚説辞典』の人たちだった。フランス人っていうのは、こういうくだらないことに懸ける情熱が桁違いだ。どんな些細なことでも体系化しなければ気が済まないのだろうか。それはいいとして、たぶん世界で唯一の奇人辞典である。  あいうえお順にインデックスされており、どのように読むかは各人の自由。1ページ目から順に目を通すのもよし、気が向いたときに適当に開いたところを適当な分だけ読むもよし、本棚に飾っておくだけでもよし。2段組で400ページ近くあるので、ものすごい博識に圧倒されながら、暫くは楽しめる。

 徳田サネヒサ  1944年に79歳で死んだ日本人。三角形の物にしか興味を示さず、息子のシンスケは展示会を開いて、父が残したオブジェのいくつかを披露した。その中にはいずれも三角形のワイングラスや灰皿、それに煙草盆や米櫃があった。死の少し前、徳田氏は三角形の家を建てるつもりであったともいう。息子はこの父のために、三角形をした墓を立てた。

 笑い  1982年4月17日、ロンドンに住むフィッツハーバートという婦人が『三文オペラ』の観劇に出かけた。バニスターという有名な役者がピーチャム役で登場すると会場は爆笑の渦で包まれ、フィッツハーバート夫人もみんなと同様、声を立てて笑った。が、その笑いは止まらなかった。第二幕の終わり近くになっても彼女は依然として笑い続け、周囲から外へ出るように懇願された。これが水曜日の夜の出来事。夫人はそれから三日三晩笑い続け、金曜日の早暁、息を引き取った。

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