その日は久し振りの快晴だった。
秋の長雨のせいでしばらくぐずついていたが、やっとそれも一段落し、雲一つない天気に恵まれた。布団を干すには最適といった日だ。
僕も溜め込んでいた洗濯物を処理することが出来、一つ大きな仕事を終えたかのようなすっきりとした気分だった。
昼からは買い物に出かけた。
太陽を全身に浴びる。前日までの湿り切った空気をまさに一掃する晴れやかさだ。昨日通った道もまるで雰囲気が違う。そんな中を僕は自転車で走り抜けていた。
とあるマンションの前を通りかかった。やはりこの機会を見逃すはずはない。どのベランダにも洗濯物がたなびいていた。
そんな中、異彩を放つものを見てしまった。
「野球でキャッチャーが身体につけるやつ」だ。
長い物干し竿にそれだけが干してあった。風に遊ばれてぱたぱたとしていた。洗濯物でひしめく他のベランダが滑稽に見えるほど、そのベランダは強烈な個性を放っていた。
だいぶ溜まっているはずの洗濯物の代わりに干された、一つの「キャッチャーが身体につけるやつ」。
その孤独をものともしない堂々たる威厳は、感動的ですらあった。