報道とカメ

 近年、いわゆる「ひきこもり」と呼ばれる者が凶悪犯罪に走るケースが増加しており、今朝(2005年2月15日)も、そういった類の事件が報道されていた。
 ここで、そういう傾向について社会的な論議を展開しようというつもりはないし、特に個人的な意見もない。ただ、思ったのは、報道に際して付随して流される情報のことである。

 例えば、今朝のニュースによれば、その事件を起こした少年は、家に引きこもり、一日中テレビゲームに没頭していたという事実がことさら強調されて伝えられていた。
 ここで僕が知ったのは、理解不能な犯罪を犯したひきこもりの者に、ゲームに過度に熱中しているという側面があると、そのことに焦点が当てられるということだ。

 以前、ひきこもり状態の男が、ペットショップでカメを盗んだと報道されていた。その男はカメを溺愛しており、自宅で何十匹ものカメを飼育していたのだそうだ。
 この際は、先ほどのゲームの少年のケースとは違い、「カメが犯罪に与える精神的影響」を危惧するような報道はされていなかった。これはきっと、カメマニアの男が、高価なカメが欲しいがために起こした犯罪であり、分析せずとも、犯行の理由が明白であるからであろう。
 では、この男が路上で突然に刃物を振り回し、無差別に人々を殺傷していたら、ニュースでの扱いはどうなっていたか。新聞各誌の一面に「容疑者、カメ飼育」の字が踊ることになり、社説で「カメと犯罪衝動の関係」について大きく取り上げられていたかもしれない。
 ただ、それは起こっていないので誰にもわからないし、過去にそういった報道を見たこともないので、犯罪を語る際にカメがクローズアップされるかどうかは不明だ。

 あるいは、こういうこともあるかもしれない。

 「男は、意味不明な言葉を叫びながらバットを振り回していたところを、駆けつけた警察官に取り押さえられました。なお、男は、ここ数年間は自宅にひきこもり、一日中カレーを作っていたということです。
 『朝から晩までカレーだったみたいですよ。スパイスの量とか、かなりこだわっていたようで。夜中にカレーの匂いがしてきたこともしばしばありましたねぇ。インド映画のテーマ曲みたいなものなんかも聴こえてきて』(近隣住民の話)
 県警は、容疑者宅のカレー及びスパイス類を全て押収すると共に、容疑者には精神鑑定を実施し、また、事件の原因究明のために、専門家らに『カレーと犯罪の関係』の分析を依頼するとしています」

 こんなニュースを、僕は見てみたい。


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