看板の氾濫

 街には看板が溢れている。どこを見ても看板が目に付く。それには、ある店の所在を顕示するための表示、またはその場所への案内、あるいは、広告、宣伝、警告など、必ず何らかの情報が記されており、我々にそれを伝えようとしている。伝達せんとする内容あっての看板である。
 しかし、街に看板は氾濫しすぎてしまった。ここまで大量になると、中にはよくわからない奴も出現したりするものだ。

 僕のアパートのすぐ近くだ。その看板には、こう書いてある。
「仲よくしよう 一 二 三」
 意味難解なカウントアップが付随したこのメッセージが、民家のコンクリート塀に貼り付けてある。だいぶ色褪せた跡が窺えるので、かなり前から同じようにしてあったのだろう。
 この看板から、我々は何を知り、そしてどのような行動を起こすべきなのだろうか。前半部分は、人と人との親交を深めることを推進するための意味だと容易に理解できたとしても、後半にある数字の並びにさしかかると、何だか考えるのも馬鹿馬鹿しく思えてきてしまう。その中に意味を読み解こうとも、「一 二 三」はどう考えても「一 二 三」でしかないからだ。

 国道17号線に架けられた一つの歩道橋の昇り口には、手書きでこう記されたものがあった。
「おはよう あせらないで」
 明らかにこれから歩道橋を渡ろうと登ろうとしている者に対して向けられているものなので、階段を昇る際にあせった気持ちで進むと、つまづいてしまうので気を付けろという意味の忠告なのだろう。だが、そんなことはわざわざ表示しなくてもいいのではないか。お節介というやつだ。しかし、階段に足を引っ掛けて転倒する者が減っていたとしたら、それはそれで良いことだし、僕はお節介は嫌いではない。
 残念ながら、この看板は今はもうない。

 川沿いの道を散歩していたところ、こんな看板が堂々と立っていた。
「ゴミを拾てないでください」
 初歩的なミスだ。しかし、小学4年生くらいならまだ許せるが、大の大人がこんな間違いをしてはいけない。しかも、それは市による看板だ。僕の居住する地方自治体が阿呆だと思われるので、一刻も早く撤去してほしいのだ。


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