小ネタ集と幾つかの夢 2004〜2005

 近所のスーパーに行ったところ、餃子のコーナーの前で一人のおっさんが、「神様!神様、もう少しだけ!神様!」と叫んでいた。
 恐かったので距離をおいた。

 大学に、イリウチジマという人がいて、彼はいつも回っているらしい。
 いつも回っている。
 実際に見たことがないので、どんな回り方なのか、どの程度の速度なのか、右回りなのか左回りなのか、それらを知る術がないのが残念だが、何度も見かけたという友人によると、とにかくいつも回っているらしい。
 いつも回っているのである。
 それに対してまず初めに浮かぶ疑問は単純なもので、目的地にたどり着けるのかという問題だ。
 なにしろいつも回っているのだ。
 自分が現在どこを向いているのかすらもわからないはずで、回っている間に、どこに行きたかったのかもわからなくなってしまっているのではないか。極めて深刻な事態だ。
 彼は今、どこで何をしているのだろう。やはり回っているのだろうか。それは右回りなのだろうか、左回りなのだろうか。謎は深まるばかりだ。

 大学でのゼミ。自称「永遠のティーン」を掲げる男が、前週の欠席理由を訊かれて、「金策に走っていた」と答えていた。
 「それで、金は集まったのか」との問いかけに、
 「………………………………………集まりましたよ」
 と、よくわからない間で回答していた。

 就活ナビを眺めていたのだった。
 注目したのは東京レーダーという企業だ。そこには、こう書いてあった。
 「東京にもないし、レーダーもやってない会社それが東京レーダー」
 そんなに堂々と言われても困惑するしかない。

 片田舎の路上にて。アスファルトに赤い塗料で、やたら大きく一文字だけ、「愛」と書いてあった。
 愛を叫んでいたのだろうか。

 ツッコミがいないというのは致命的である。
 我々は、もはや家を出ないと最後のバスに間に合わないという事態を迎えていた。そんな時に一人が言った。
 「あ、なんか眠いわ」
 彼は横になった。
 もう一人が言う。
 「ホントだ。よく考えたら眠かった」と、彼女もその場に身を横たえる。
 そして、最後の一人も寝ている場合ではないということがわかっていながら、言ってしまうのである。
 「あ、俺も眠い」
 こうして我々はバスに乗り遅れたのだった。

 近所のスーパーに行ったところ、売れ残りの天ぷらがひとまとめにして販売されていた。そこには商品名としてこう表示されていた。
 「揚げ物(代表)」
 もちろん、「代表」の意味がわからないのである。ワールドカップではないのだ。

 市立図書館の通りに、いつもシャッターが閉まっている米屋があるのだが、そのシャッターには張り紙がしてある。そこにはこう書いてあった。
 「特別栽培米
 特別栽培米
 特別栽培米
 特別栽培米」
 奇妙な、何だか呪術的なメッセージである。

 喫茶店みたいな建物があった。扉には張り紙がしてあった。
 「バルサン使用中です」
 だから何だ。

 近所のクリーニング店が手作りの旗を店先に出していた。そこにはこう書いてあった。
 「家庭おたおたすけ ワャシャツ100円」
 間違え過ぎ。

 踏み切りのすぐそばに寿司屋があった。その寿司屋の名前である。
 「ふみきりずし」
 こだわりとかないのかよ。

 ハシバという男が髪を切ってきたのだった。彼は、若干、変な人だ。
 「ハシバ君、髪切った?」
 「え? あー、切断はしましたけど」
 「切断」とは何だ。

 ひどく感傷的な夢だった。体調を崩したと言ってどこかへ去ってしまった知り合いの女性を追いかけていた。
 視界に入った階段を下りると、そこはスーパーマーケットだった。その中で彼女の姿を探しているうちに、僕はなぜか店内の一角のスペースでお好み焼きを焼き始めたのだった。
 そこでは一人の中年の男も同様にお好み焼きを作っていた。別の男が、その男を指して僕にこう言った。
 「あいつは、ヤフーポイントは2ポイントしかないが、お好み焼きポイントは500もあるんだ」
 全く意味がわからないのである。

 夢を見ていた。
 夢の中で僕は携帯電話にてメールを打っていた。
 画面にはこう表示されていた。いまだに鮮明に覚えている。
 「スーピープカブ」
 意味がわからない。
 そして、僕は一体誰にこの難解な文面を送ろうとしていたのかも不明なのである。

 信号待ちをしていると、隣に外国人らしき人が来た。電話で誰かと話していた。「I'm sorry」とか言ってたので、英語圏の人なのだろう。
 何気なく聞いていると、彼はこう言った。
 「兄貴おったらライバル」
 確かにそう言っていた。たぶん空耳だが、そう聞こえたのだ。

 夢を見ていた。
 どんな状況だったかは覚えていないが、室内に人が数人いた気がする。皆、椅子に腰を下ろしていた。
 雑談をしていると、誰かが大声で言うのが聞こえた。かなり突然だった。
 「もし私が千葉弁を話せなかったらバトル!」
 どういうことだ。

 夜の静寂を切り裂いて、ものすごいくしゃみをするオッサンがいる。
 ある時は夜の10時頃、ある時は夜中の12時頃、ある時は深夜の3時頃。
 どこの誰だかは知らないが、実家にいるとたまに外から聞こえてくるのだ。
 春にも聞こえたし、夏も、冬も、そして、先日帰った時も、オッサンは怒号のようなくしゃみを辺りに響かせていた。
 本当にものすごいくしゃみなのだ。
 くしゃみの表現の最上級は「ばっくしょい」であるらしいが、そんなものでは足りない。もはや言葉では表現できないのだ。
 たぶん、距離的には結構遠いと思うのだが、それでも、空間を超越して、窓を閉め切った僕の部屋に、明瞭に侵入してくるのである。
 そろそろ疑問に思っているのだ。
 あれは本当にくしゃみなのか。
 だが、くしゃみではないとしたら、一体何なのかがわからないのだ。

 図書館で見つけたのだが、大類雅敏という人がすごい。どうやら国文学者らしい。その著書をいくつか紹介しよう。
 『句読点おもしろ事典』
 『句読点活用事典』
 『国文句読法』
 『そこに句読点を打て!』
 『日本文学における句読点』
 『文章は、句読点で決まる!』
 『文体としての句読点』
 句読点のことだけで7冊も本が書けるとは知らなかった。句読点のことばかり考えている人生とは、一体どんななのだろう。
 そして、『そこに句読点を打て!』とは何だ。将棋ではないのだ。

 うどんとそばの話をしていた。
 ある者は「温かいそばはおいしくない」と言い、ある者は「そんなことはない」と言っていた。「うどんはあたたかいとおいしいが、そばは違う」、「でもさ、そばって健康にいいんだよ」。そんな感じだ。
 いつまでもそんな論争を続けてもいたちごっこなので、一人が話をまとめようとし、「うどんとそばって、同じ麺類だけど、互いに尊重しあって存在してる気がするよね」と流れを変えた。
 それを受けて、すかさず違う一人が言った。
「リスペクト食品だ」
 それは何だ。


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