石を投げるルソー

 テレビで見たか、本で読んだかは忘れたが、それは確かルソーの話だった。中学校の社会科で出てくるルソーである。

 ルソーは落ち込んでいた。何だか知らないが、人生に絶望していたのだそうだ。

 彼は、ふと足元の石を拾い上げ、遠めにある木を見据えて、こう思った。

 「この石を投げて、あの木に当たったら、きっとこの先うまく行くはずだ」

 まじないのようなものである。
 彼は、木に向かって石を投げてみた。

 当たらなかった。

 すると彼は、少し木に近づいて、石を手に取り、同じように投げた。

 当たらない。

 もう少し近づいて、投げてみる。

 当たらない。

 それを何度か繰り返しても、一向に石は木に命中することはなかった

 そして遂に、どう考えても当たるだろうというところまで近づいてしまった。

 石を投げる。

 当然に、それは木に命中した。

 で、ルソーは思った。

 「やったぞぉ、僕の人生はこの先うまく行くんだ」

 何てポジティブなやつだ。やっぱり天才は違う。
 落ち込んだ際は、この方法を試みてみるといいと思う。


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