ニラとサブリミナル効果
とあるスーパーマーケットにて
職業柄、1日に50回くらいは「いらっしゃいませ」と口にすることになっているわけだが、それについて考えていたのだった。
「『ニラっしゃいませ』と言ってみたらおもしろいんじゃないか」
そして、実際に客とすれ違う際に言ってみた。「ニラっしゃいませ」と。何回も試みた。
恐らく、誰も気付いていなかったと思う。
僕が明瞭に「ニラっしゃいませ」と言っているにも関わらず、「え?」と言ってくる人は全くいなかったし、こちらを訝しげに見つめたり、振り返ったりする人すらいなかったのだ。
恐らく、「店員は『いらっしゃいませ』と言う」ということが彼らの脳内にはインプットされており、店員がすれ違った際に何かそれらしいことを言ったら、「いらっしゃいませ」であると勝手に脳が解釈してしまうのだろう。
サブリミナル効果とは
サブリミナル効果というものがある。以下はWikipediaによる解説である。
潜在意識、意識と潜在意識の境界領域に刺激を与える事で表れるとされる効果。
1957年にマーケティング業のジェームズ・ヴィカリが、ニュージャージー州フォートリーの映画館で上映された映画「ピクニック」のフィルムに「コーラを飲め」「ポップコーンを食べろ」とメッセージが写ったコマを5分ごとに繰り返し挿入し、売上に影響があるかを測定した実験が有名である。フィルムの一コマを人間が認識する事は不可能だが、この映画を上映したところコーラとポップコーンの売上が増大したとされる。
確かに僕は「ニラっしゃいませ」と言ったのだから、それを聞いた者の耳には「ニラっしゃいませ」は届いているはずである。ただ脳が「いらっしゃいませ」と解釈してしまっているに過ぎない。すなわち、僕の言った「ニラっしゃいませ」は彼らの潜在意識には一石を投じているに違いないのだ。
そうである。上のWikipediaの解説に従えば、「ポップコーンを食べろ」が「ニラっしゃいませ」ということになる。
ニラを潜在意識に刷り込む
ニラを買いに来たのではない客がいたのだった。何人かの店員が、すれ違った際に「いらっしゃいませ」というのが聞こえる。で、なんとなく客は思う。
「あ、ニラレバでも食べようか」
実はその店員たちは「いらっしゃいませ」ではなく、「ニラっしゃいませ」と言っていたのだった――。
この通り、店員たちに「ニラっしゃいませ」教育を徹底し、実践すれば、ニラの売り上げ向上に繋がるのではないだろうかと僕は考える。
そして、僕が一人で「ニラっしゃいませ」と言っていた日のニラの売り上げが少しでも伸びていることを信じて疑わない。
※引用文中のジェームズ・ヴィカリの実験結果については、いまいち信憑性が低いという説が有力なようです。